
文学部で教えるべき重要なことのひとつは、テキストの読み方の指南と批評的能力の涵養ではないだろうか。テキスト(文字で書かれたあらゆるものを指す)を読むということは、それが作り上げられたときに働いていた、作り手の伝記的な知識や社会的・文化的・歴史的状況に関する知識、空白を埋める知識(いや想像力)を総動員して読むということです。大学において、これほど知的でスリリングな営みがほかにあるだろうか。精密に読むことによって内容や意図が理解され、解釈によって隠れた、あるいは暗示されているだけの意味や主題が明らかになる。
その上で、テキストを無闇にあがめるのではなく、つねに問うことをやめない批判的な態度でテキストに立ちむかう。ときには、テキストが提示している価値や姿勢に対抗する。こうして批評的能力が培われる。そうなれば、向かうところ敵なしの読み手となるだろう。世界は無数のテキストで織りなされているのだから、賢く生きるためにも、世の中に騙されないためにも、テキストを味わいつつも、批判的に読む訓練を積み重ねよう。それができるのが文学部です。
文学部長 伊藤 章 教授 Itoh Akira
研究分野はアメリカ研究、とくにアメリカ文学で、目下の関心分野は「アジア系アメリカ人のエスニック文学、都市論とニューヨーク都市小説、アメリカにおけるマイノリティ集団の歴史、移民問題など」について。主な担当科目はアメリカ文化概論、アメリカ文学史など。主な著書には『ポストモダン都市ニューヨーク』(編著、松柏社、2001年)などがある。静かな面持ちとは裏腹に、趣味は山歩きにスキーというアウトドア派。


